
拝啓
僕の声は、まだ君に届くだろうか。
夏は今年も容赦なく光を降らせ、蝉の声は空気を震わせている。
その輝きの中に、ふと滲むような陰を見つけてしまうのは、
君を思い出すせいだろう。
君のことを思い浮かべるたび、心の中のピントはわずかにずれて、
輪郭は揺らぎ、色だけが鮮やかに残る。
白いシャツが風に揺れる様子も、
夕暮れに溶ける横顔も、眩しさと憂いがひとつに重なっている。
僕はそんな景色を写し直そうと、
何度もレンズを覗き、何度もピントを合わせ直す。
それでも、心の中の君はいつも少し遠くに立っている。
忘れられない、忘れたくない、忘れてしまいたい——
そのすべてを連れて
今日も夏は続いている。
敬具